音楽誌等に色々書いてる石川貴教のブログ。

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

FC2カウンター

ブログ内検索

If

「不測の事態はいたるところ、すべてに関して広がっていた。
そんな容赦ない不測の事態も、180度ねじってしまえば、
私たち小中学生が教わるところの ”歴史 ”に、
無害な歴史になってしまう。

そこにあっては、当時は予想も出来なかったことすべてが、
不可避の出来事としてページの上に並べられる。

不測の事態の恐ろしさこそ、災いを叙事詩に変えることで
歴史学が隠してしまうことなのだ」



今年の八月に日本語訳が出版された
フィリップ・ロスの「プロット・アゲンスト・アメリカ」

もしも、1940年(真珠湾攻撃の前年)に反ユダヤ主義者のリンドバーグが
ローズベルトの三選を阻み、アメリカの大統領になっていたら・・・
というお話。

リンドバーグは実際に反ユダヤ主義で
当時のナチス・ドイツから勲章を受け取ったこともある。
第二次大戦前には、
「イギリスを助けるためにアメリカが
ヨーロッパの戦争に参加、支援する必要はない。
アメリカの若者をヨーロッパの戦地に送ることに反対だ」と主張。
また、
「これらの集団、イギリス、ユダヤ人、ローズベルト政権の三つのうちの
ひとつでも煽動をやめたなら我が国が戦争に巻き込まれる危険は
ほぼ消え去ると私は考えます」
(本書巻末の資料1941年のリンドバーグの演説から)


この本、巻末の資料によるとリンドバーグは
「ソ連を撃退しその国境のかなたに存在するアジア勢力(モンゴル、
ペルシャ、ムーア)を撃退することに文明の存続はかかっている」
と信じていたようで、また
「私たちの結集した力」にもその存続はかかっていると説き
「そのあまりの強力さゆえに、外国の軍も挑もうとしない力。
ジンギスカンも寄せ付けず、劣等な血の浸透も寄せ付けない、
人種と武器からなる西洋の壁・・・」などと語っていたそうです。

(飛行に関しては「西洋人の手に合わせて作られた道具。
~アジアに群がる有象無象とギリシャまで遡るヨーロッパの遺産とを隔てる
もう一つの障壁」と見ていて
「それこそが黄、黒、茶の迫りくる海に会って、白人人種がかりそめにも
生きていくことを可能にしてくれる貴い財産の一つ」なんだって。
凄いこと考えるね。)

リンドバーグ以外の他の登場人物もほぼ実在の人物。
(日本人の名前は一名しか出てきません)
この「もしも」の世界ではアメリカはナチス・ドイツと密な関係を持ち
枢軸国にも敵対しない。
(なぜリンドバーグがドイツと親密だったのか、その理由に関して
この小説ならではのアッと驚く大胆な推測も出てきます。がネタバレなんで記しません)
そのため、ナチス・ドイツはヨーロッパで着々と勢力を拡大。
イギリス、フランスは苦境に拍車がかかり、
アメリカ国内でもユダヤ系の人々に迫害の手が伸びる。
その渦中でユダヤ系アメリカ人の中に
「抵抗を選ぶ人」、
「敵への協力を選ぶ人」、
「自分以外の人間の苦難には一切関心を持たず、自分を選ぶ人」
などの考え、行動の違いが表出してくる。
そして、その後・・・

この本では、よくある架空戦記物のノベル本のような
「ドイツ艦隊と連合艦隊がソ連、イギリスと大西洋で砲撃戦、
長引いて夜戦に突入」みたいな具体的な戦闘場面は皆無です、念のため


また、フィリップ・K・ディックの「高い城の男」も同じような
多元世界、パラレル・ワールド的な小説でしたが
本作は迫りくるファシズムの脅威にさらされた
子供とその家族の視点を中心として物語にしている。

ほのめかし、ぼやかし、暗喩的な表現がほとんど使われていないせいか、
身を焦がすような緊迫感、どうにもならない焦燥が伝わってくる。
読んでいる間はこれは本当にあった出来事じゃないか、
そう感じさせる力のある小説。
特段長い小説ではありませんが、読みごたえはへヴィー級でした。



【 2014/11/15 10:50 】

未分類  | コメント(0)  | トラックバック(0)  |

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)